ビリヤードのコツ / ビリヤードの科学

同じ厚みなのに、なぜ違う方向へ行くのか?

衝突の直後と、ラシャの上を進んだ後とを分けて考えると、止め球・押し球・引き球と分離角を結びつけられます。

今日覚えておくこと1つ

厚みだけではその後の経路は決まりません。的球に当たる瞬間の速度・回転と、衝突後のラシャの摩擦も見る必要があります。

図で動きを読む

前進回転 → ついていく

衝突
手球が正面衝突のあと一瞬遅くなり、前へついていきます(押し球)。
  • 点線:手球の出発
  • 赤:的球の移動
  • 黄:衝突後の手球

前後の回転0 → 止まる

手球が停止
正面のスタンなら手球はほぼ止まります(止め球)。厚みを外して当てると横に分かれます。
  • 点線:手球の出発
  • 赤:的球の移動

後退回転 → 戻ってくる

衝突
衝突の瞬間に後退回転が残っていれば、手球は後ろに戻ってきます(引き球)。
  • 点線:手球の出発
  • 赤:的球の移動
  • 黄:衝突後の手球

TTBoysが作成した学習用の概念図です。論文の実測グラフやシミュレーションの結果ではなく、矢印の長さ・角度は原理を説明するためのものです。

90度は条件つきの基準です

同じ質量の球の一方が静止していて、球どうしの摩擦とエネルギー損失を無視した非正面の弾性衝突を考えると、衝突直後の2つの移動方向は直角になります。正面衝突で手球が止まる場合は、その球の進行角そのものが決められないので、別に扱います。

実戦で使う止め球の90度ルールはこの基準を利用しています。しかし前後の回転が残っていると、衝突後のラシャの摩擦が手球の進行方向を変えます。画面上で十分に進んだ後に測った角度を、衝突の瞬間の角度と混同しないでください。

最初の衝突は速度を変え、残った回転はその後の経路に働きます

正面衝突では、手球の前進運動のかなりの部分が的球に伝わります。前進回転が残れば手球はついて行き、後退回転が残れば戻ってくることがあります。厚みを外して当てると横向きの移動成分も残るので、この正面の図のような直線の経路にはなりません。

大切なのはキューが当たったときではなく、的球に当たったときの状態です。同じ下の撞点でも、球の間の距離が長いと後退回転が減り、まったく違う結果になることがあります。

実際の衝突には小さな摩擦と損失もあります

2023年の衝突研究は、球どうしの衝突と、その後に台の上で自然転がりへ移る段階を分けています。衝突後の経路を理解するには2つの段階を合わせて見る必要がある、という根拠として使えます。

2024年の韓国の研究も、非弾性・球どうしの摩擦・テーブルの摩擦を扱っています。1つの近似ルールが、すべての厚みと回転で正確な答えになるとは言わない理由です。

TTBoysが提案する観察練習

同じ正面の配置で衝突後の手球を見る

  1. 白い手球と赤い的球の2つだけを同じ直線上に置きます。最初は横回転をかけません。
  2. 中心に近い撞点で正面衝突を繰り返し、次のセットでは撞点だけを少し上げて比べます。当たり損ねたショットは、同じ条件の成功例として数えません。
  3. 出発・衝突直前・衝突直後・少し進んだ後の4つの時点に分けて、手球と的球をそれぞれ観察します。

観察すること:止まったか、前に進んだか、戻ったかと、衝突前の回転が本当に同じだったかを合わせて見ます。

解釈するとき:中心撞きでも、的球に届くまでの間に転がりが生まれることがあります。撞点が中心だったというだけで、衝突の瞬間を止め球だと判断しないでください。

基本・システム・実践につなげる

論文の根拠と適用範囲

資料の確認:2026-10-10 · 原理の説明と練習の構成はTTBoysの編集です。

実験・理論論文 · Antonio Doménech-Carbó

Independent friction-restitution description of billiard ball collisions ↗

Mechanics Research Communications 131, 104149 (2023) · DOI 10.1016/j.mechrescom.2023.104149

この資料が説明していること: 球どうしの摩擦・反発と、衝突後に純粋な転がりへ移る過程を分けて、速度・回転・分離方向を説明しています。

適用の限界: ビリヤード球を含む複数の球の実験はPVCの表面で行われました。実験値をそのままラシャ上の補正値として使うことはできません。

理論論文 · 김형찬 (Hyeong-Chan Kim)

Collision of Two Spinning Billiard Balls and the Role of Table ↗

New Physics: Sae Mulli 74, 621–633 (2024) · DOI 10.3938/NPSM.74.621

この資料が説明していること: 回転している手球が静止した同じ質量の的球に当たるときの、非弾性・球どうしの摩擦・テーブルの摩擦を分析しています。

適用の限界: リンク先は著者の公開版(arXiv)です。学術誌の掲載版とは異なる場合があり、この記事では要旨に示された研究範囲を根拠にしています。

実験・理論論文 · S. Mathavan · M. R. Jackson · R. M. Parkin

Application of high-speed imaging to determine the dynamics of billiards ↗

American Journal of Physics 77, 788–794 (2009) · DOI 10.1119/1.3157159

この資料が説明していること: 高速度映像で位置と速度の変化を追跡し、滑りと転がり、クッションへの衝突、分離角を調べています。

適用の限界: スヌーカーテーブルと校正済みの撮影機材による実験です。スマートフォンで同じ精度が得られるという意味ではなく、回転の追跡には別の観測が必要です。